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水中ドローンに資格は要るか

更新日:2026年9月26日

※この記事は、個人が運営する情報サイトの記事です。水産庁その他の公的機関、漁業協同組合とは関係ありません。

はっきり言えること:民間の「水中ドローン操縦士」のような認定は国家資格ではなく、エンジン付きの船を自分で操縦して海に出るなら、水中ドローンとは別に船の免許(小型船舶操縦士)が要る。

まだ分からないこと:国が「水中ドローンは航空法の対象外」と名指しで書いた文章は見つかっておらず、漁協への事前相談や都道府県の漁業調整規則が水中ドローンにそのまま当てはまるかも一次情報では確認できていない。

結論(先に伝えます)

水中ドローンを飛行機のように空を飛ばすドローン(無人航空機)と同じ扱いで考える人がいるが、水中ドローンは航空法の対象になる条件(後述)に当てはまらないため、国の資格や免許なしに操縦できる、と読める。

ただし、これは「水中ドローンという道具そのもの」の話であって、「水中ドローンを使う場面」まで含めると話は変わる。船を出す、決まった場所で作業する、漁業者の漁場に入る、といった場面では、水中ドローンとは別に必要になる資格・手続きがある。この記事では、その全体を場面別に整理する。

場面別の早見表

場面資格・手続きは要るか内容
水中ドローンを操縦する(機体そのもの)要らない、と読める国の資格・免許制度は見当たらない(後述)
ケーブルでつないで有線操縦する要らない、と読める電波を使わない操作には、電波を規制する法律(電波法)はそもそも関係しない、と考えられる
水上の中継機や操作機で無線(Wi-Fiなど)を使う機器が「技適」マーク付きか確認が必要技適マークのない無線機器は、日本国内で使うこと自体が電波法違反になりうる(水中ドローン固有の説明は見つからず、一般の無線機器のルールから類推)
船を出して作業する(自分で船を操縦する場合)要る場合がある水中ドローンの資格ではなく、船を操縦するための「小型船舶操縦士」の免許(船の話)
港の中や、決まった航路のすぐそばで作業する要る場合がある海上保安庁(港則法は「港長」、海上交通安全法は「海上保安部長」)への許可申請・届出。港湾管理者・海岸管理者の許可が要る場合も(後述)
漁業権が設定された海域(漁場)で作業する法律上の義務は確認できず、実務上は事前の相談が必要漁協への事前相談が実務の作法として広く行われている(法令上の明記は見つからず)
民間の「水中ドローン操縦士」のような認定を取る任意(取らなくてもよい)国家資格ではなく、民間団体が発行する認定。信頼の目印にはなるが、法律上の必須要件ではない

1. 水中ドローンそのものに、国の資格はいらない、と読める

空を飛ぶドローン(無人航空機)には、国が定めた資格制度(二等・一等無人航空機操縦士)がある。この制度の対象になる機体は、国土交通省が「飛行ルールの対象となる機体」として、次のように説明している。

対象は「航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」(100g未満の機体は除く)

出典:国土交通省「航空:飛行ルール(航空法第11章)の対象となる機体」

つまり対象になるのは、①飛行機・回転翼航空機・滑空機・飛行船のいずれかの形をしていて、②「飛行」させることができるもの、の2つを満たす機体である。水中を進むだけで、空を飛ばない水中ドローンは、この2つのどちらにも当てはまらない、と読める。

ここは大事な注意点だが、国土交通省が「水中ドローンは航空法の対象外です」と名指しで書いたページやQ&Aは、今回の調査では見つからなかった。ドローンスクール等の解説記事では「水中ドローンは航空法の対象外」という説明が複数見られるが、これはいずれも民間の二次情報であり、国が直接そう言っている文章ではない。この記事の結論は「対象外と読める(法律の定義から推測した内容であり、断定はできない)」という位置づけになる。

2. 電波(無線)のルールは、有線か無線かで変わる

水中ドローンの多くは、船の上の操作機と本体をケーブルでつないで操作する「有線式」である。電波を規制する法律(電波法)は、電波を出す機器(無線設備)を対象にした法律のため、ケーブルだけで操作する部分には、そもそも関係しない、と考えられる。

一方で、船の上の中継機や操作機がWi-Fiなど無線の仕組みを使っている場合は話が別になる。無線を使う機器は、日本国内で使うために「技適」(技術基準適合証明。国の基準を満たした無線機器であることの証明マーク)が必要で、このマークがない機器(海外から個人で買った機器など)を使うと、電波法違反になる可能性がある。

ここも水中ドローン専用の説明を総務省の一次情報で見つけることはできなかった。この項目の内容は、ドローン全般の電波ルールから類推したものである。

3. 船を出すなら、水中ドローンとは別に「船の資格」が必要になる

水中ドローンを使うとき、多くの場合は船から海に降ろす。このとき自分で船を操縦するなら、水中ドローンの資格ではなく、船を操縦するための資格「小型船舶操縦士」が必要になる(エンジン付きの船を操縦する場合。国土交通省の制度)。

一級・二級・特殊の3つに分かれており、操縦できる範囲や船の種類が違う。これは水中ドローンの資格とは完全に別物である点を、混同しないよう気をつけたい。

出典:国土交通省海事局「免許の取り方」「免許制度」

4. 港の中・決まった航路の近くでは、海上保安庁への許可・届出が必要になることがある

海の上での「工事」や「作業」には、港則法・海上交通安全法という別の法律が関わってくる。

水中ドローンによる点検・調査が、この「工事又は作業」に当たると判断されれば、港の中や航路のそばでは許可・届出が必要になりうる。ただし、どこまでが「工事又は作業」に当たるかは場所や内容によって変わるため、実施予定の海域を管轄する海上保安部に、事前に問い合わせるのが実務上の作法とされている。

ここまでは港則法・海上交通安全法(海上保安庁が窓口)の話である。これとは別に、港湾区域の中では港湾法、海岸保全区域の中では海岸法により、港湾管理者・海岸管理者(多くは都道府県・市町村)の占用・使用の許可が必要になる場合がある。窓口は海上保安庁とは別なので、作業する場所を管理する港湾管理者・海岸管理者にも合わせて確認したい。

5. 漁業権が設定された漁場では、漁協への事前相談が実務の作法

養殖場や定置網など、漁業権が設定された海域で水中ドローンを飛ばす(潜らせる)場合、その海域を管理している漁業協同組合(漁協)への事前の相談が必要、という説明が複数の実務解説サイトで一致している。「どこで、誰が、何のために潜らせるのか」を書いた簡単な計画を作って、漁協や港湾管理者に事前に伝えるのが基本の進め方とされる。

「水中ドローンの利用には漁協の許可が法律上必要」と明記した水産庁・水産庁関連の一次情報は、今回の調査では見つからなかった。漁業権はその海域で特定の漁業を営む権利であり、水中ドローンでの点検・調査行為そのものを直接規制する法律的な仕組みとは別の話である可能性がある。ただし、漁業権者との関係を壊さないことは、現場で長く活動を続けるうえで欠かせない配慮であるため、法律上の義務があるかどうかにかかわらず、事前に一声かけることを強くすすめる。

なお、漁業権とは別に、都道府県ごとに「漁業調整規則」という規則があり、海域での特定の行為(漁具・漁法・区域・期間の制限など)を定めている。水中ドローンの利用がこの規則の対象になるかどうかは都道府県ごとに異なり、この記事では一律の確認ができていない。作業する都道府県の水産担当課に、事前に確認することをすすめる。

出典:水産庁「瀬戸内海漁業取締規則・都道府県漁業調整規則」

6. 民間の「認定」は、国家資格ではない

「水中ドローン安全潜航操縦士」のような名前の認定は、国ではなく民間団体(一般社団法人など)が発行しているものである。取得すれば技術・知識の証明にはなるが、国が定めた資格ではなく、取らなくても水中ドローンを操縦すること自体は法律上できる、という位置づけになる。就職・受注のために取得する人はいるが、それは「必須だから」ではなく「信頼の目印になるから」という理由になる。

立場別・確認することリスト

自分で水中ドローンを潜らせる人(養殖業者など)向け

  1. 船を自分で操縦して海に出るなら → 最寄りの海事事務所・小型船舶教習所に、船の免許(小型船舶操縦士)が必要かを確認
  2. 作業する海域が漁業権区域なら → その海域を管理する漁業協同組合に、事前に計画を伝えて相談
  3. 港の中や決まった航路のそばで作業するなら → 管轄する海上保安部に、港則法・海上交通安全法の許可・届出が必要かを確認
  4. 港湾区域・海岸保全区域にかかる作業なら → 港湾管理者・海岸管理者(都道府県・市町村の窓口)に占用・使用の許可が必要かを確認
  5. 都道府県ごとのルールが気になるなら → 作業する都道府県の水産担当課に、漁業調整規則の対象になるかを確認

漁協の職員向け(組合員から相談されたとき)

  1. 「水中ドローンを使いたい」と相談されたら → まず作業する海域が漁業権区域かどうかを確認
  2. 船を出す計画なら → 船を自分で操縦する場合は小型船舶操縦士の免許が必要(水中ドローンの資格とは別)と伝える
  3. 港の近く・航路のそばでの作業なら → 管轄の海上保安部への相談を案内
  4. 港湾区域・海岸保全区域にかかる作業なら → 港湾管理者・海岸管理者への確認を案内
  5. 都道府県の漁業調整規則に該当しそうなら → 県の水産担当課への確認を案内

次の記事:スマート水産業の補助金/国産の水中ドローンの紹介(準備中)

参考にした公的な資料(確認日:2026年9月26日)

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